新版 臨床化学 第2版
- タイトル読み
- シンパンリンショウカガクダイニハン
- 著者ほか
- 伊藤啓/片山善章/長村洋一・編
- 著者ほか読み
- イトウハジメ/カタヤマヨシアキ/ナガムラヨウイチ
- 発行
- 2008/04/10
- サイズ
- B5判
- ページ数
- 221
- ISBN
- 978-4-06-139823-8
- 定価
- 3,520円(税込)
- 在庫
- 在庫無し
内容紹介
正常範囲,基準範囲を見直し,各手法を検査室の現状に合わせたコンパクトで使いやすい定番テキスト.最新の知見とデータを盛り込んだ改訂版.
(初版)まえがき
臨床化学の要点を簡潔にまとめた教科書『臨床化学』が臨床検査界における先駆者である斉藤正行,丹羽正治両先生により編集,出版されたのが1975 年であった.その後,時宜にかなった改訂がなされ『三訂臨床化学』まで発行された.これらの本は多数の教員,学生,現場の職員から素晴らしい教科書としての高い評価を得,非常に多くの版を重ねることができた.しかし,検査分野でも特に臨床化学分野における日進月歩の発展には目覚ましいものがあり,歴史的な意義しかないような検査法も出てきてしまった.そこで,斉藤,丹羽両先生の御助言を得て,全く新しく版を起こすことが計画され,本書出版の運びとなった.
本書の編集方針として,臨床検査技師教育および薬学部の臨床薬学における検査値の見方を学ぶための教科書として,次の点に重点をおいて編集した.各測定項目については多くの測定法が報告されているが,近年臨床化学分析法が自動化されてきたため,実際に使用されている方法は数が限られてきた.したがって,測定法に関しては今日全国的に最も多く使用されている方法を詳述し,その他は簡単な解説または一覧表として網羅した.また,検査が自動化されるに従い,これから検査技師として重要になってくることは患者のデータが読めることである.そこで,各検査のデータが疾患とどのように結びついているかを理解させるために,各項目の"体内代謝と臨床診断的意義"の内容の強化を図った.
さらに,測定法の開発が臨床化学の主題であったころ,酵素などの章に割かれるべき頁数は非常に多かったが,最近は標準化により1 つの方法に集約されてきているので少し縮小した.反面,高齢化社会を迎え,高齢者に多い循環器障害のもととなっている脂質検査の問題が重要視されてきた.そこで,本書では脂質の項に大幅な頁数を割いた.また,臨床検査機器総論で詳述される機器の原理,操作法,尿中成分の定性,定量および精度管理については省略した.必要に応じて本書のシリーズにある該当の箇所を参照されたい.
また,従来の正常範囲を全面的に基準範囲に切り替えることを目的としてデータの収集に当たったが,現在のところ,全項目にわたり基準範囲を掲載することは時期尚早であると判明した.したがって,著者らの施設においてきちんと基準範囲が求められたもの以外は従来通り正常範囲として記載し,かっこ内に国際単位を付記した.
本書の編集にあたり,実習内容を並行して掲載してはとの意見もあった.先述のように,臨床化学分析の多くが,現在は自動分析機によって行われている.したがって,現実的な意味での実習は自動分析機の習得になる部分が多い.この状況下にあって臨床化学実習に求められることは臨床化学的思考,言いかえれば新しい臨床化学を開拓する思考力を養成することであると考えられる.方法論的には古くても生体試料をどのように分析し,何を学びとるかを試薬作りから実体験することが主体であると考えられる.この観点から,本書と実習書は切り離している.実習書は講談社刊行の『改訂臨床化学実習』を併用されたい.
(「まえがき」より抜粋)
改訂にあたって
「新版 臨床化学」を刊行して,2008 年2 月で10 年になる.その間,いくつかの削除,訂正,加筆をして,現在は第10 刷まで刊行してきた.刊行して10 年になると内容が古くなるのは当然である.本書を教科書として使用されている方々は,配布資料などで補いながら講義されていると思う.
今回の改訂にあたっては,全面的に改訂することも考えたが,10 年の歳月を考慮して,初版の形体を維持して以下の点について,見直しをはかる形の改訂とした.
1. 臨床化学または臨床化学分析として,一般的知識として知っておくべきことを重点に記載し,加筆訂正,また,新規項目を追加する.臨床検査技師国家試験も意識して記述する.
2.現在,検査室の現場で日常検査に利用されている測定法は反応原理を記載する.
3. 基準範囲と正常範囲に関しては,初版「まえがき」にあるように,NCCLS のガイドラインの基準範囲の意味を考慮すると,単に従来の正常範囲を基準範囲と書き換えることに抵抗があるので,今回の改訂版もこの方針にしたがった.
4. 日本臨床化学会,日本臨床検査技師会などで公表されている標準法(勧告法)はできる限り記述する.
(「改訂にあたって」より抜粋)
[執筆者一覧]
青木芳和/伊藤啓/今井利夫/大島一洋/大橋鉱二/小川善資/片山善章/狩野元成/桑島実/河野典夫/齋藤邦明/篠原力雄/芝紀代子/只野智昭/中野尚美/長村洋一/沼上清彦/長谷川明/村椿春博
目次
まえがき
改訂にあたって
1 総 論
1.臨床化学分析の基礎知識
1. 1 臨床化学とは
1. 2 臨床化学分析とその特徴
1. 3 検体(検査材料)の取り扱い
1. 4 環境への配慮とバイオハザード
1. 5 試薬に関する知識
1. 6 標準液濃度の表し方
1. 7 国際単位系(SI 単位)
1. 8 基準範囲
2.臨床化学的分析法
2. 1 臨床化学における分析
2. 2 吸光光度法
2. 3 蛍光反応,化学発光反応
2. 4 分離分析
2. 5 酵素的分析
2. 6 免疫学的測定法
2 各 論
1.無 機 質
1. 1 無機質の概要
1. 2 ナトリウム,カリウム
1. 3 クロール
1. 4 重炭酸イオンと炭酸ガス分圧
1. 5 カルシウム
1. 6 マグネシウム
1. 7 無機リン
1. 8 血清鉄
1. 9 銅
1. 10 その他の無機質
2.糖 質
2. 1 血糖の代謝と病気
2. 2 尿糖
2. 3 糖尿病関連物質
2. 4 その他の糖代謝と疾患
3.蛋 白 質
3. 1 血清蛋白質とその異常
3. 2 総蛋白
3. 3 アルブミンならびにA/G 比
3. 4 蛋白分画
3. 5 膠質反応
3. 6 糖蛋白および急性相反応物質
3. 7 免疫グロブリン
3. 8 その他の蛋白質
4.含窒素成分
4. 1 窒素代謝と病気
4. 2 アミノ酸
4. 3 アンモニア
4. 4 尿素
4. 5 クレアチン・クレアチニン
4. 6 尿酸
4. 7 ビリルビン
5.酵 素
5. 1 酵素と疾患
5. 2 酵素活性測定法
5. 3 乳酸デヒドロゲナーゼ
5. 4 γ─グルタミルトランスフェラーゼ
5. 5 アスパラギン酸トランスフェラーゼ,アラニントランスアミナーゼ
5. 6 クレアチンキナーゼ
5. 7 コリンエステラーゼ
5. 8 酸性およびアルカリ性ホスファターゼ
5. 9 アミラーゼ
5. 10 ロイシンアミノペプチダーゼ
5. 11 その他の酵素
6.脂 質
6. 1 脂質代謝と疾患
6. 2 リポ蛋白質
6. 3 アポリポ蛋白質
6. 4 総脂質
6. 5 コレステロール
6. 6 中性脂肪(トリアシルグリセロール,トリグリセリド)
6. 7 リン脂質
6. 8 遊離脂肪酸
6. 9 過酸化脂質
7.ホルモン
7. 1 ホルモンとその異常
7. 2 下垂体ホルモン
7. 3 甲状腺ホルモン
7. 4 ステロイドホルモン
7. 5 副腎髄質─交感神経系
7. 6 膵,消化管ホルモン
7. 7 その他のホルモン,関連物質
8.薬物および毒物
8. 1 血中薬物および毒物の測定意義
8. 2 薬物
8. 3 毒物
8. 4 ドーピング検査
9.腫瘍マーカー
9. 1 腫瘍マーカーの定義と分類
9. 2 腫瘍マーカーの臨床応用
9. 3 腫瘍マーカーの測定法および正常範囲
9. 4 代表的腫瘍マーカー
3 機能検査
1 機能検査の基本的考え
2 肝・胆道系機能検査
3 腎機能検査
4 内分泌機能検査
4 緊急検査
1 緊急臨床化学検査項目
2 病態と検査
3 ER,ICU での検査
4 緊急検査における簡易検査
基準範囲,正常範囲一覧