ビタミンの新栄養学

著者・編者
発行
サイズ
B5判
ページ数
253
ISBN
978-4-06-156302-5
価格
5,280 (税込)
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ビタミンの新栄養学

内容紹介

ビタミンは壊れやすく代謝も複雑で、相互作用の研究も新しい。
基礎知識から研究の成果、食事摂取基準を解説。
サプリメントや服薬との作用などにも言及した。
学生、食品・栄養系の教員、研究者必読書。


  ビタミンは栄養素の中では,一番新しい栄養素である.
 タンパク質,糖質,脂質,カルシウムや鉄などのミネラルがあれば,動物は正常に生育することができるとする時代が相当長く続いた.
 ヒトと物質が世界レベルで動くことができるようになり,富国強兵が唱えられた19 世紀末から20 世紀初頭にかけて,健康と食べ物に関する動物を用いる研究がはじまった.エイクマンはニワトリを用いて,ホプキンスはラットを用いて,タンパク質,糖質,脂質,ミネラルに加えて,未知の栄養素が存在することを示した.この新しい栄養素の実体が明らかにされたのが1910 年12 月13 日である.発見者は,日本人の鈴木梅太郎である.未知の栄養素を,当初「アベリ酸」のちに「オリザニン」と命名した.日本では,12 月13日を「ビタミンの日」として登録してある.
 翌1911 年,フンクが,鈴木と同様の研究成果を発表した.フンクは,米ぬかから単離した成分を「Vitamine」と名付けた.この名前から「e」を除いた「Vitamin」が,未知の栄養素の総称名として使われることが1920 年に提案された.1929 年,ビタミンの発見に対してノーベル賞が与えられた.受賞者はエイクマンとホプキンスの二人であった.
 鈴木博士は,日本人第一号のノーベル賞を逸した.新しい栄養素の名付け親となることも逸した.本書に付録として, 1931(昭和6)年2 月1 日発行の科學知識普及會「科學知識」に掲載された鈴木博士の「回想録」を掲載した(一部旧字旧かな使いは改めた).悔しさが感じられる.
 とにかく,ビタミンは1910 年に日本人が発見したのである.そしてこの100 年間に,13 種類のビタミンが発見され,ビタミンが動物の正常な成長にどのようにかかわっているのかが分子レベルでも明らかにされつつあり,健康長寿を達成するための栄養素量解明に関する研究もほぼ終わりに近づいてきた.豊かな食事ができる現在の日本ではビタミン欠乏症はほとんどない.しかしながら,食事に起因する病気を根絶することはできない.
食事の栄養素量が不適当でも,ヒトは不快さや痛みを伴わないからである.
 本書は,ビタミン発見100 周年を記念し,今までに明らかにされた事実をまとめるとともに,発見100 年を越えて,どのようにビタミン学が発展していくのかについてもまとめた.大学で栄養学関連を教育する先生方および大学院で健康・栄養科学に関する研究を行っている学生をおもな対象者としている.この本をきっかけとして,ビタミン学に興味をもっていただければ大変うれしい.さらに,ビタミンの研究をしてみたくなればなおさらである.
(まえがきより)

【執筆者一覧】市育代/乾博/今井具子/岩川裕美/梅垣敬三/榎原周平/岡野登志夫/亀井康富/薯h原晶子/小城勝相/佐野光枝/澤村弘美/柴田克己/末木一夫/瀧谷公隆/田中清/玉井浩/津川尚子/早川享志/福渡努/星野伸夫/宮本恵美/室田佳恵子/渡邊敏明/渡邉文雄