コメディカルのための社会福祉概論 第2版
- タイトル読み
- コメディカルノタメノシャカイフクシガイロン ダイニハン
- 著者ほか
- 鬼﨑信好・編
- 著者ほか読み
- キザキノブヨシ
- 発行
- 2014/02/20
- サイズ
- B5判
- ページ数
- 196
- ISBN
- 978-4-06-156308-7
- 定価
- 2,640円(税込)
- 在庫
- 在庫無し
内容紹介
社会福祉の考え方や歴史、対象者別の福祉や地域福祉などを図解や実例で学ぶ。
障害者総合支援法や精神保健福祉法に対応。看護師、理学療法士、作業療法士、(管理)栄養士などに必須の社会福祉を協働の視点でまとめた簡潔明瞭なテキスト。
'人が人を助ける'という行為は有史以来,存在してきていると思います.しかしそれが社会の制度として位置づけられたのは,ほんの数世紀前からです.社会福祉の発展過程から示すと,その行為を,「施与」「慈善」「博愛」「救済」「社会事業」「社会福祉事業」「社会福祉」という用語で説明することができます.しかし,社会福祉をどのような用語で説明しても,また時代的背景の相違はあるにしても,社会福祉の課題は社会生活を営むうえで困難な問題を抱える人々をどのように支援していくかにあります.
わが国の今日でいう社会福祉は明治期以降に取り組まれるようになりました.そして,本格的な取組みは第二次世界大戦後からです.社会福祉関係法の制定,その充実の努力が高度経済成長と軌跡を同じくしてなされてきました.しかし,1980 年代以降は社会福祉の潮流は在宅福祉へと転換するようになり,20 世紀末以降は社会福祉のパラダイム(基本的枠組み)の転換が主張されるようになったのです.この理由(背景)は,21 世紀は減速経済に基づく社会システムを形成しなければならなくなっていることにあります.もっとわかりやすく言いかえれば,20 世紀は成長の理論によって社会システムを考えればよかったのですが,21 世紀は少子高齢社会を前提とする社会システムを考えなければならなくなっているのです.就労形態ひとつを考えても,非正規雇用が多くなっていますし,定年も60 歳ではなく,延長を考えなければならなくなっています.そして,老後の生活期間は長くなり,20 年間を超える退職後の生活は珍しいものではありません.これらは従来の常識を大きく超えていますし,制度が前提とする枠組みを大きく超えています.
医療施設や社会福祉施設の現場に眼をやれば,医療従事者の方々は,日々の業務を通じて患者やその家族などからさまざまな相談を受けることも多いと思います.そのような際,対人援助の基本姿勢を保持したり,介護保険制度や生活保護制度,障害者に関する各種制度,医療保険などの制度を説明できるなど,社会福祉を学ぶことには大きな意義があります.社会福祉の価値や倫理を学ぶことは,対人援助職に大切な視点を与えてくれます.また,近年では社会福祉士,精神保健福祉士,介護福祉士などの福祉専門職と各種の保健医療従事者が協働するチームアプローチが欠かせなくなっています.
そこで,本書は,(准)看護師,保健師,助産師,理学療法士,作業療法士,管
理栄養士・栄養士,言語聴覚士,薬剤師,臨床検査技師,臨床工学技士,診療放射線技師,義肢装具士,救急救命士,保育士などを目指す学生の皆さんに向けて社会福祉の基本書として2012 年3 月に出版されました.しかし,その後の急激な人口高齢化の進行,さらには経済・社会情勢の変化を踏まえ,社会福祉制度はドラスティクな改正が求められるようになっています.そこで,その後の制度見直しなどを踏まえ,第2 版を出版することにしました.
(まえがきより)
【執筆者一覧】荒木剛/今村浩司/片岡靖子/鬼﨑信好/永田千鶴/畑香理/古野みはる/本郷秀和/松岡佐智/村山浩一郎/渡邊暁
目次
第Ⅰ部 社会福祉とその分野
1.社会福祉とは
1.1 語源からの理解
1.2 最広義,広義,狭義からの理解
1.3 社会福祉分野で使われる用語の整理
1.4 歴史的系譜
1.5 福祉の措置から契約へ
2.日本の社会福祉の歴史
2.1 古代から近世の慈善救済
2.2 明治から第二次世界大戦までの慈善救済
2.3 第二次世界大戦後の社会福祉
2.4 福祉見直し論から社会福祉基礎構造改革へ
2.5 新たな社会福祉の動向と社会保障と税の一体改革
3.社会保障制度と社会福祉を展開する組織
3.1 社会保障制度の体系
3.2 社会保険
3.3 公的扶助
3.4 社会福祉を展開する組織
3.5 今後の課題
4.子ども福祉
4.1 少子化対策
4.2 子どもにかかわる法制度
4.3 児童福祉関連施設,専門職と専門機関
4.4 母子保健
4.5 児童虐待
4.6 子育て支援事業
5.障害者福祉
5.1 障害者福祉の考え方
5.2 障害者福祉に関する法律
5.3 障害者総合支援法
5.4 障害者虐待
6.高齢者福祉
6.1 高齢者を取り巻く状況
6.2 高齢者を対象とした法制度
6.3 高齢者福祉の課題
7.介護保険制度と専門職の役割:チームアプローチの必要性
7.1 介護保険制度創設の背景
7.2 介護保険制度の概要
7.3 介護保険制度を支えるケアマネジメントとケアマネジャー
7.4 チームアプローチ
8.低所得者福祉
8.1 貧困とは
8.2 生活保護制度
8.3 生活保護にまつわる関連事業
8.4 低所得者対策
8.5 現状と今後の課題
9.地域福祉
9.1 地域福祉とは
9.2 地域福祉の推進組織と担い手
9.3 地域福祉計画とコミュニティ・ソーシャルワーク
10.医療福祉
10.1 医療保険制度の概要
10.2 保険診療のしくみ
10.3 医療機関の機能
10.4 医療福祉と専門職
10.5 地域連携
10.6 医療ソーシャルワーカー
11.精神保健福祉
11.1 精神障害者とは
11.2 精神障害者を取り巻く状況
11.3 精神保険福祉法の概要
11.4 医療観察法
11.5 障害者雇用促進法
11.6 自殺防止対策
11.7 認知症高齢者に対する対策
第Ⅱ部 社会福祉サービスの提供主体と社会福祉の援助方法
12.社会福祉施設の役割
12.1 社会福祉施設の体系
12.2 社会福祉施設の推移
12.3 社会福祉施設の枠組み
12.4 今後の課題
13.社会福祉を担う人々
13.1 社会福祉従事者の現状
13.2 社会福祉従事者の職種
13.3 社会福祉専門職のおもな職種と仕事内容
13.4 社会福祉専門職の資格制度
13.5 社会福祉を担う人々:非専門職
11.6 社会福祉従事者による連携・協働の意義
14.社会福祉の相談援助:考え方とその方法
14.1 社会福祉における相談援助の目的と対象
14.2 社会福祉における相談援助者の基本姿勢
14.3 相談援助の展開方法
15.社会福祉の実践事例
15.1 病院における医療ソーシャルワーカーの必要性
15.2 脳梗塞を発症したA さんの支援事例
15.3 施設入所に関するB さんの支援事例
15.4 事例のまとめ:医療ソーシャルワーカーの視点と多職種協働を中心に
16.社会福祉を巡るこれからの課題
16.1 社会福祉に関する諸問題の例
16.2 保健医療従事者に期待されるおもな役割