今度こそわかるファインマン経路積分

和田純夫・著
シリーズ:
今度こそわかるシリーズ

今度こそわかるファインマン経路積分

発行
2014/12/25
サイズ
A5判
ページ数
239
ISBN
978-4-06-156601-9
定価
3,300円(税込)
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内容紹介

初学者がつまずくところを熟知した著者による,丁寧な解説.

「経路」を「積分」するとはどういうことか?
天才ファインマンが作り上げた「経路積分」は,量子論に大転換を巻き起こした.この画期的手法を,物理的意味を重視してやさしく解説する.従来のどの本を読んでもわからなかった読者の"再入門"に最適の書!

〈本書「序文」より〉
量子力学の基本方程式は通常,シュレーディンガー方程式という微分方程式であるとされる.経路積分は,それを積分方程式として書き直したものである.通常の量子力学では古典力学から出発し,それを量子化するという数学的手順でシュレーディンガー方程式を得る.そして本によってはそれから,経路積分の式を導く.教育的見地からは最終的に量子力学を理解できればいいのだから,基本方程式の導入の手順がどうであっても悪いわけではない.しかし自然法則の中での地位から考えれば,先に量子力学があり,古典力学はその近似理論として導かれるべきものである.だとすれば,量子力学(あるいは場の量子論)はどこからもってくればいいだろうか.それを,2スリット実験の分析から想像される量子力学的粒子像を出発点にしようというのが,本書第1章の話である.そのような議論をすると,シュレーディンガー方程式より先に経路積分の発想が自然に出てくる.

目次

■第I部 経路積分の基礎■

第1章 2スリット実験から量子力学的粒子像へ
 1.1 電子のイメージ
 1.2 ビー玉を転がす
 1.3 ヤングの実験
 1.4 干渉
 1.5 ヤングの実験の意味
 1.6 光子
  Column1-1 プランク定数
  Column1-2 光子のエネルギーの大きさ
  Column1-3 光子のエネルギーと運動量
 1.7 光子の2スリット実験
 1.8 電子の2スリット実験
 1.9 「量子論的な」粒子
 1.10 共存度
 1.11 ボルンの確率則
  Column1-4 ボルンの確率則は導けるのか
 1.12 2スリット実験の拡張
 1.13 多スリットのケース
  Column1-5 検出確率・共存度
  Column1-6 状態は複数,痕跡は一つ

第2章 経路積分の簡単な例:1次元の自由粒子
 2.1 時間発展を表す積分核
 2.2 具体例
  Column2-1 ガウス積分
 2.3 局在した状態:静止しているケース
 2.4 局在した状態:等速で動くケース
 2.5 広がった状態:波長が決まった波動関数
  Column2-2 フーリエ変換
  Column2-3 δ関数
 2.6 波の重ね合わせの状態:フーリエ変換の方法
 2.7 hbarの導入
  Column2-4 p = hbar kと保存則
 2.8 波束の広がり方
 2.9 シュレーディンガー方程式:積分方程式から微分方程式へ
 2.10 積分核と分散関係
 2.11 ω ∝ kの関係

第3章 一般的な経路積分:力が働いている場合
 3.1 自由粒子の経路積分再考
  Column3-1 多変数のガウス積分
 3.2 力の効果を取り入れる
 3.3 経路積分とシュレーディンガー方程式
  Column3-2 古典力学でのラグランジアンと作用
 3.4 量子力学での自由落下
 3.5 時間に依存する外力とグリーン関数の方法

第4章 他の形の経路積分:正準形式・運動量表示・コヒーレント表示
 4.1 ラグランジアンとハミルトニアン
 4.2 ハミルトニアンで表現する経路積分
 4.3 シュレーディンガー方程式からの導出
 4.4 演算子順序
 4.5 運動量表示での経路積分
 4.6 コヒーレント状態
 4.7 コヒーレント表示による経路積分

第5章 エネルギー固有状態:連続スペクトルの例
 5.1 エネルギー固有状態と積分核
 5.2 自由粒子の場合
 5.3 ポテンシャルが1次式の場合
 5.4 積分核からエネルギー固有状態を求める
 5.5 固有関数の近似的な求め方
 5.6 V = mgxの場合
 5.7 禁止領域(x > E/mg)

第6章 井戸型ポテンシャル:離散スペクトルの場合
 6.1 無限に高い壁
 6.2 エネルギー固有状態
 6.3 井戸型ポテンシャル
 6.4 量子化条件:井戸型ポテンシャル
 6.5 量子化条件の一般論

第7章 調和振動子
 7.1 調和振動子
 7.2 ΔSのガウス積分
  Column7-1 ΔSのガウス積分:固有値による計算
  Column7-2 ファン・ブレックの公式
 7.3 波束の振る舞い
 7.4 エネルギー固有状態:基底状態とエネルギー準位
 7.5 励起状態の波動関数:積分核の展開による方法
 7.6 コヒーレント状態を展開する方法
 7.7 e^{iEt/hbar}を掛けて積分する
 7.8 定常位相の方法
 7.9 禁止領域
 7.10 コヒーレント表示によるコヒーレント状態の扱い

■第II部 発展的話題■

第8章 クーロン・ポテンシャル
 8.1 問題の置き換え
 8.2 新しい変数の導入
 8.3 エネルギー準位
 8.4 波動関数:基底状態
 8.5 第1励起状態の動径成分
 8.6 第1励起状態の角度成分
  Column8-1 式 (8.33) の説明

第9章 トンネル効果
 9.1 x = 0に不連続性がある場合の波動関数
 9.2 束縛状態
 9.3 トンネル効果
 9.4 共鳴状態と崩壊
  Column9-1 ガモフ‐ジーゲルト理論との比較
 9.5 一般の場合の寿命

第10章 デコヒーレンスと散逸:ファインマン‐バーモンの影響汎関数
 10.1 多自由度の経路積分
 10.2 対象物と環境
 10.3 カルデイラ‐レゲットのモデル
 10.4 影響汎関数の計算
 10.5 有限温度の初期状態
 10.6 エネルギーの散逸

第11章 場の経路積分
 11.1 場の量子論とは
 11.2 古典場としての波動関数
  Column11-1 シュレーディンガー方程式の導出
 11.3 場の経路積分
 11.4 エネルギー固有状態
 11.5 外場中の粒子の場
 11.6 作用の自然さ:相対論的アプローチ
 11.7 フェルミ粒子とグラスマン数
  Column11-2 フェルミ粒子とボース粒子
 11.8 フェルミ場の経路積分

 第12章 宇宙波動関数と虚数時間
 12.1 一般相対論と膨張宇宙
 12.2 フリードマン宇宙のバリエーション
 12.3 宇宙定数
 12.4 量子宇宙論
 12.5 経路積分による宇宙波動関数
 12.6 古典軌道